―『最も危険な年』(2016年)のその後―

「少数者の人権」と「多数者の不安」

                             (2021年7月27日 朝日新聞朝刊より)

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 米国連邦最高裁は2021年6月に、トランスジェンダーの男子生徒に対し、男子トイレの使用を禁じた教育委員会の決定を「違法」と認めた。

この裁判は2015年に提訴され、2016年にオバマ政権が「自認する性のトイレ利用を認めるべきだ」という指針を発表したにもかかわらず、2017年にトランプ政権が発足後、この指針を撤回したために長期化し、約6年越しの訴訟にようやく決着がついた。

 

 控訴審において、原告であるグリムさんが「トイレを敬遠するようになり膀胱炎になった」「遠いトイレしか使用できず、授業に遅れることを余儀なくされた」と認定し、通常のトイレの使用を認めないことで「歓迎されていない」というメッセージを送り、精神的な被害につながったと判断した。

 

 米国では保守的な地域を中心に、トランスジェンダーの人たちのトイレや更衣室の使用を「生まれた時の性」に限定する動きが出ている。一方、グリムさんの訴訟を支援した米自由人権協会(ACLU)によると、こうした学校での規制を違法と判断した控訴裁判断はこれで3例目。性的マイノリティの権利を認める司法判断が、米国で次第に定着しつつある。